『ギートステイト』理論タグで描かれたように、この時代、南関東州の人々の生活空間は市場原理に則ってゾーニングされ、互いのライフスタイルに関して寛容な社会、あるいは無関心な社会が実現しています。こうした社会が持続する上で鍵となる技術が「セキュリティ」でした。この作品には多くの人物が登場しましたが、彼らの生活空間を隔てている根幹技術であるこのセキュリティに、危機が到来しつつあります。
かつて、グローバリゼーションの進行とともに、ローカルな文化は、世界標準へと収斂されていくのだろうと考えられていました。しかし実際の歴史の進行は少し違ったようで、各国の現実は、世界の市場化とともに、むしろ反動的に愛国心が高まる、という現象が見られるようになっています。これは日本も例外ではなく、と言うよりも日本は典型的で、グローバル化とともに起こる愛国心の高まりは、教育基本法の改正や現在論議されている改憲の議論に表れているように感じます。
『ギートステイト』の舞台である2045年の日本は、今ここに我々が体験している現実を起点にした世界。この世界では、反動的な愛国心の高まりはとうに燃え尽きてしまっていますが、しかし、恐らくこの時代の人にとっては前世紀的なロマンと感じられるであろう、国家に対する思い入れを持った人はまだいました。古渡一郎です。彼は彼が抱く国家というロマンにもとづいて行動しています。
2045年11月に仕掛けられたセキュリティの崩壊。人々のライフスタイルのシェルとなっていた技術が無効になった時に、なにが現れるのか。previous75と名乗って現れた古渡の思惑に、一度は乗ってみせた小野寺笑男は、なにをやってのけるのか。『ギートステイト』の作品世界は新たな段階を迎え、いよいよクライマックスに突入していきます。
また、新たな段階を迎えるのは作品世界だけではありません。作品公開の形も広く新たな展開を構想しています。連載を楽しみにしていただいている皆様には申し訳ないことに、ここで公開は一時お休みをいただきますが、今後の『ギートステイト』に、よりいっそうのご期待をいただけましたら幸いです。
新フェイズをぜひお楽しみに。
MouRa 堀田